うさぎドロップ  作者:宇仁田ゆみ 掲載誌:FEEL YOUNG

うさぎドロップ
今俺が“これは犠牲じゃない”って
言い切るのは
ウソくせーから
何年か後に
そう思えたらいいなと
そう思う
あらすじ
祖父が死んだので葬儀の為に祖父の家に訪れた会社員の河地大吉(かわち だいきち)は祖父の家で見知らぬ少女と出会う。少女の名前は鹿賀りん(かが りん)と言ってなんと祖父の隠し子であった。祖父と顔が瓜二つという事でりんに懐かれていた大吉は子供の前で無神経な話し合いをする親戚に腹を立て半ば勢いでりんを引き取った。
独身で働き盛りの男が幼子を育てるのには様々な苦労があった。保育園を探して毎日送り迎えをする、子育てを優先するために残業のない部署へ移動し給与カットや同僚の陰口に遭う。しかし、しっかりもののりんとの暮らしは大吉にとって穏やかで悪くない日々で2人は父娘のような関係を築いていく。
時は流れ、りんは高校生になり自分を捨てた母親の事、将来の事、そして恋愛について考えるようになった。そして、考えた末に自分が恋愛感情を抱いているのは長年家族として暮らしてきた大吉であるという事に気づく。
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今回紹介するのは血の繋がりのない男と少女が“家族”になる『うさぎドロップ』です。本作は2部構成になっており、りんの幼少期を大吉目線で語る第1部とりん目線でりんの恋の行方を描く第2部になっています。
第1部はアニメ・実写映画にもなっており、アニメではりんを初め作中の子どもの声優は年齢の近い子役を起用されているのが特徴です。大人の声優とは違うしたっ足らずの演技は可愛らしいですし、アニメの雰囲気も柔らかくてそちらもお勧めです。
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男の子育て
日本では(或いは多くの国が)子育ては女性がするものという認識が世間では根強く、男一つで子育てをする大吉の生活は中々大変そうです。それを象徴するエピソードとしてりんの為に残業のない部署へ異動を頼み、運よく理解ある上司だったので異動の願いが通じましたが、大吉が優秀な人材だったので彼の異動に異を唱える後輩が“犠牲”という言葉を使って引き留めようとします。その言葉で大吉は子育てとは犠牲になる事なのかと考えます。
結果は仕事の代わりはいてもりんの父親の代わりはいないという結論に達しますが、この問いかけは読者にも考えさせられます。特に最近は妊娠子育てに関してネガティブな情報がやたら入ってくる時代ですし。
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賛否両論の第2部
第1部は父と娘の物語で雰囲気もほのぼのとしたものでしたが、第2部からは雰囲気が一転してどろどろさの入ったりんの恋愛話になります。これには「親子の物語として読んでいたのにこんな展開望んでいない」「大吉視点では後味の悪い話になった」や「りんの幸せとしてこれ以上の結末はない」「色々思う事はあるけどりんが幸せになったから良い」と賛否両論です。
個人的にはりんの事を幼い頃から好きだったコウキと結ばれて結婚式で大吉と一緒にバージンロードを歩くエンドが1番綺麗な形で終わったんじゃないかなぁと思うんですが、大吉なら自分との子供を大事に可愛がってくれそうというりんの気持ちも実母の事を考えると分かるなぁと。