既視感  作者:キャスリーン・レイクス(キャシー・ライクスとも訳される) 日本語訳:山本やよい 日本語訳出版社:角川文庫

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ドラマと小説の違いについて軽く説明します。
『テンペランスについて』
・愛称が違う。ドラマ版ではブースからボーンズという愛称で呼ばれているが、小説の愛称はテンペ。
・ドラマ版では結婚に否定的だが小説では結婚しているものの夫との仲は冷めきっており別居中(確か後に離婚)。また大学生ぐらいになる娘がいる。
ちなみにドラマ版のブレナンは日本ではバツイチになっていますが、アメリカでは1話に登場したのは元カレでブレナンはブースと結婚するまで誰とも結婚していないらしいです。何故日本版ではバツイチになったのかは分かりませんが、恐らく誤訳か小説の設定に沿ったからなのでしょう。
・小説ではテンペランスは元アルコール依存症
ドラマではブレナンは両親の失踪とその後の孤独と虐待がトラウマになっていますが、小説では理由は既視感では描かれていませんがアルコール依存症で現在でもお酒の誘惑と戦う日々を送っています。ドラマでは依存症を持っているのはブースとインターンのヴィンセントでした。アメリカのドラマでは依存症を抱える人が多数登場しているのでアメリカでは依存症の問題は日本よりも表面化しているのでしょうか?
・性格
ドラマのブレナンはとことん理詰めで自分の主張は曲げない女性です。頭脳明晰な反面対人コミュニケーション能力は低く失言をして相手を不快にさせたり怒らせたりしてしまうという欠点があります。また普段は落ち着きがあるのに時折無邪気な少女のようにはしゃいだりする姿が印象的です。
一方小説のテンペランスは自分の主張を曲げない点は似ていますが、ブレナンと違ってナイーブで人間臭い面が目立ちます。小説はテンペランスの一人称で語られるので彼女の内面がよくわかりますが、離れて暮らす娘に対する嘆きや愛情、出会う女性に対する外見に対する毒っ気のある評価、職場の人間や警察に対する苛立ちが細かく語られています。ブレナンのように事あるごとに人類学や論文を語る事もなくブレナンよりも対人関係も上手く作れています。
個人的にはドラマのブレナンの方が成熟さと未熟さ、知的かつ無邪気な所が魅力的ですが小説版の枯れた女性の孤独さが描かれたテンペランスも味がありますね。
『捜査方法』
・ドラマではアンジェラのコンピューター技術を駆使した3D映像やホッジンズの土や虫の専門知識で死体の身元や死因を解き明かしていきますが、小説では死体の鑑定はほぼテンペランスの法人類の知識と技術で行われています。その為ドラマと比べると派手さがなく、些か地味な印象が受けます。最も作者のキャシー・ライクス氏は世界でも数少ない法人類学者で本作の事件も実際に仕事であった事件をモチーフにしているので小説の売りはドラマの派手さやインパクトよりも正確な法人類で事件を解くところにあります。
・小説を読んで思ったのが、ドラマと比べると女性差別的な言動が多いという事です。警察が男社会だからなのかキャシー先生の実体験を元にしているからかは分かりませんが、専門家としての意見を述べたのにも相手にされず何かにつけて「女は!」と疎まれるシーンは読んでいて結構ブルーになります。だからこそ頼れる人がいない中で一人で凶悪犯と戦うテンペランスの姿が輝くと思いますが…。
ドラマはバディものでBBコンビ(ブレナンとブース)の関係も対等で性差別を受けるシーンはほとんどありませんので小説ではこんなにも嫌な目に遭ってるんだと驚きました。
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ドラマのBONESが好きで原作(と言っていいのでしょうか?)を読んだのですが、コミカルな描写やラブロマンスが強いBONESに対して、小説はアルコールへの依存心・冷めきった家庭・自分を見下す周囲に悩まされながらも戦うナイーブな女性の物語と別物でした。個人的にはテンペランス以外の登場人物をもっと掘り下げて魅力的に描かれたらもっと面白かったのになぁっとちょっと評価は厳しめですが、次回作を機会があれば読んでみたいと思う位には面白かったです。
BONESではブレナンが小説を出版していますが、それってこのテンペランスブレナンシリーズでしたっけ? ちょっと見返して登場人物の名前とか設定確認しないと。