3月のライオン  作者・羽海野チカ  掲載紙・ヤングアニマル

3月のライオン

 

 

――ほらアナタの居場所なんて
この世の何処にも無いんじゃない?

 

 

『ハチミツとクローバー』で有名な羽海野チカ先生が描く将棋漫画『3月のライオン』について紹介します。

主人公桐山零は15歳でプロの将棋棋士になった天才少年です。しかし、才能に恵まれながらも彼の境遇は過酷なものです。
小学生の頃に家族を交通事故で亡くし、桐山の才能を認めていた父の友人でプロ棋士の幸田(下の名前はまだ分かっていません)に内弟子として引き取られますが、その才能の為に幸田の実子2人を追い抜くようになり、結果、姉は夜遊びなどの非行をするようになり弟はゲームに逃避するようになりました。
僕はカッコウだ…
おしのけた命の上に立ち
春をうたえと 呼ぶ声をきく
――そして思う
いっそ本当に鳥だったらと
そうしたら
こんな
激しい痛み
知らずに済んだのにと
この出来事はプロとして一人立ちした後も桐山の心に深い傷を残し、特に香子の過去の言葉や行動はふとした瞬間に桐山を苦しめます。
さすが、繊細な心理描写が特徴の羽海野先生の作品だけあって、桐山の孤独と受けた傷が読者にダイレクトに伝わります。

しかし、桐山の周囲にはたくさんの優しい人がいます。
母親代わりとなって妹を育てる働き者の長女の川本あかり。明るくて元気な次女の川本ひなた。天真爛漫な甘え上手の三女の川本モモ。
以前無理矢理飲酒させられ置き去りにされている桐山をあかりが助けたのを縁に度々食事を共にするようになり、家族を失った桐山に家族の温かさを与えてくれる存在になっていきます。
そして、桐山の事をライバル視して何かと張り合うプロ棋士の二海堂晴信。子供の頃から何度も将棋の対局をするうちに桐山をライバル視するようになり、人付き合いの苦手な桐山も(若干面倒くさがりながらも)対等に話ができる数少ない友人です。

少女漫画出身だけあってモノローグと繊細な画風が印象的ですが、将棋漫画としての側面も強く、普段は気の弱い桐山も将棋に関してだけは負けず嫌いやプライドを発揮し、その時の熱さは川本家の3姉妹と過ごしている時の桐山とは一味違います。
人の優しさと勝負の厳しさが温かいタッチと目線で描かれた作品、是非1度手にとって読んでみてください。