百姓貴族  作者・荒川弘  掲載紙・ウンポコ→月刊ウイングス

百姓貴族1

 

水が無ければ牛乳を飲めばいいのに飲めばいいのに

 

『鋼の錬金術師』『銀の匙』とヒット作を産み出す漫画家、荒川弘(あらかわひろむ)
彼女は(作風や名前からは想像しにくいけど実は女性)農家に産まれて幼い頃から農業をしてきた生粋の農民である。
この漫画はそんな農業や家畜にまつわるエピソードや個性ありすぎる家族のエピソードが赤裸々に綴られたエッセイマンガである。
今回紹介するのは世にも珍しい農家エッセイです。荒川先生の代表作『銀の匙』は農業高校が舞台で農業高校出身の先生の実話や経験談が盛り込まれていますが、本作はそれ以上に先生の農業に対する思い入れや価値観が描かれています。
このエッセイの特徴は何と言っても先生を始めとする人間のたくましさではないでしょうか。事実は小説より奇なりを地で行きそうな強烈なエピソードがこれでもかという程描かれています。特に先生の父のエピソードはどれもスケールがでかくてホントに実話かと思ってしまうほどです。
例えば、ある時荒川家の次女があわや指を切断する寸前の大怪我を負った時には病院に行ったら指を本当に切断されるから病院には連れて行かず自己流の治療法で完治させたり、トラクターを運転している際に長男が後輪の下敷きになってしまい父の冷静な運転で奇跡的にかすり傷ですんだり、あげくにはトラクターを運転している時に橋が壊れていてブレーキを踏んだら間に合わないからとそのままトラクターごと橋を越えたというネタに困らない人で荒川先生が

「誰かこの親父をハリウッドへ連れて行け」

と言うほど。ホントよく家族全員無事に生きていけたな。
農家の知られざる世界が垣間見れる貴重なエッセイ漫画。人間の強さや自然の凄さが伝わってくるエネルギッシュな作品です。