残酷な神が支配する  作者:萩尾望都  掲載誌:プチフラワー

残酷な神が支配する

ある悲しみの話を
しようと思う

あらすじ
ある冬の日。イアンは実の父が起こした交通事故で亡くなった義母のサンドラの葬式に出席する。サンドラの遺体が埋葬される光景を涙を流しながら呆然とした様子で見る少年がいた。彼はサンドラの実子で連れ子のジェルミだ。イアンはそんなジェルミに話しかけるが彼は壊れた人形のように小さく呟く。
「なんであいつの車に…サンドラ…」
「あいつが死ぬ…はずだったのに」
ジェルミの言葉でイアンは父が引き起こした交通事故はジェルミが引き起こしたものだと気づく。
全ての発端は6月末の出来事だった。
ボストンで暮らしていたジェルミはガールフレンドのビビアンや友人と共に穏やかな生活を過ごしていた。母の店にグレッグという裕福な資産家がやってくるまでは。
エリート階級で紳士的なグレッグにサンドラは惹かれ、グレッグもサンドラを愛するようになりやがて2人は身分を超えて結ばれる。母の結婚を祝福しつつもボストンを離れる事は考えていないジェルミは母の結婚を機に1人暮らしを始めようかと考えていた矢先、グレッグがジェルミの前に現れた。グレッグにドライブに誘われたジェルミは車の中で突然グレッグに口づけをされる。グレッグはあろうことかサンドラだけでなくジェルミの事も愛してしまい彼を自分のものにしようとした。あまりのことにグレッグを拒絶するジェルミだが、その晩グレッグはサンドラとの結婚を止めるとサンドラに告げ、サンドラはショックで自殺を図る。
サンドラの弱さを知っているジェルミは彼女の為にグレッグにサンドラとの復縁を条件に一度だけと言う約束で彼とセックスをする。それで全ては終わるはずだった。
だが、グレッグは約束を反故しサンドラとの結婚を散らすかせてジェルミに関係を強いる。
グレッグの関係で恋人のビビアンとの仲が悪くなった事と売春をしている不良・キャスと親しくしていた事が周囲にバレる事を恐れたジェルミは、グレッグが自分達の関係を終わらせようという電話を貰った事もあって逃げるようにボストンを去る。
しかし、グレッグの言葉はジェルミを自分の許へ来させるための嘘であり、ジェルミが屋敷に来た日、グレッグはジェルミをまたもや抱くのだった。
グレッグから逃げるように寄宿舎の学校に編入するジェルミ。だが、グレッグはどこまでもどこまでも執拗にジェルミを求める。
***
今回紹介するのは『残酷な神が支配する』少女漫画の神様と評される程の漫画家・萩尾 望都の代表作の1つです。
今作は同性愛や同性同士の性行為が綿密に描かれ、人によってはBLというジャンルに当てはまる作品と思う人もいるかもしれませんが、ジェルミとグレッグの関係は性的虐待の加害者と被害者の関係でそこに愛はなく、むしろ誰にも相談する事のできない関係に苦悩しとうとう罪を犯してしまった少年の不幸を描いた作品だと思います。
しかし、このグレッグという男はひどい奴ですね。同時に2人の人間を愛するだけならまだしも(それもどうなんだって話ですが、以降の蛮行と比べたら愛するだけならましに思えます)母を愛するジェルミの気持ちを利用して性的虐待を続けたり、自分の思い通りにならないと平気で愛する人をも傷つける。更には両親に似ていない次男のマットを冷遇して結果としてマットを自殺未遂まで追い込んだり。
冒頭でジェルミに殺されますが、死後も彼を苦しめ続けたグレッグこそ『残酷な神』なんでしょうね。
あと、サンドラも弱い女性で彼女の弱さが結果としてジェルミを追い詰めます。依存心が強くてジェルミの意志よりも自分の感情にジェルミが応えてくれる事ばかり要求している女性で(私にはそうとしか思えませんでした)彼女もまたジェルミの『残酷な神』なんでしょう。
親と言うものは子どもにとって絶対的な存在で、神にも等しい親に苦しめられる少年の物語。すごい重いお話だけどそれでも続きが気になる1作です。