式の前日  作者・穂積  掲載誌・月間フラワーズ

 

式の前日
八つ違いの姉が
今日結婚する

式の前日
社会人3年目を迎えた男と彼の姉。結婚式を前日に控えた姉と2人でテレビを見たりご飯を食べたり何気ない日常を過ごす。違うのは翌日の結婚式で姉がドレスの試着をしたり式の席や段取りで悩んでいることだけ。両親いない。父母は男が11の時に事故で亡くなり、以来当時19~20の姉が弟を育ていたからだ。
式の前日。その日が2人ぼっちの姉弟が2人ぼっちの家族でいられる最後の日。
わたしにはふつうのおとうさんとおかあさんがいます

あずさ2号で再会
8月。家で1人で留守番をしている女の子の許に母親の元旦那、つまり女の子の父親が訪れる。父親に小言を言う娘と母に似てきたと苦笑する父親。やがて父親は家を後にする。母親が帰ってきて娘は父親と洗濯物を干した事を告げる。それに母親は何を言っているのと不思議がる。机の上には父親の写真と線香。
男はすでに死んでいてお盆の1日だけ娘の許に会いに来ていたのだ。

十年ぶりの兄弟の再会だった。

モノクロ兄弟
双子の兄弟、弟の禄朗と兄の志郎。同級生の富樫由紀子が癌で亡くなりその葬儀の日に2人は10年ぶりに顔を合わせ飲みに行くことなった。昔の恋について語る2人。その次の日、禄朗は健康診断に引っかかり再検査の結果末期癌である事が分かり、数か月後にこの世を去った。まるで初恋の人の許へ行くように。

私はここからすべてを眺めていた

夢見るかかし
母親に捨てられた兄妹、ジャックとベティ。兄妹の母を憎む伯父と意地の悪い義兄弟から冷たい仕打ちを受けジャックにはベティを守る事だけが生きがいだった。ベティは寂しさのあまり畑のかかしをママと呼び今でもその癖は直っていない。
やがて兄妹は成長し、兄は女遊びをするようになり妹は美しく成長して恋をするようになる。しかし、ベティが自分から離れる事を耐えられなかった兄はその現実から逃げるように故郷を捨て都会へと逃げる。
数年後、誰が送ったのかベティが結婚するという便りを受けてジャックはベティの結婚式に参加する。ベティが自分の結婚式を“母”に見てほしいとジャックにかかしを連れてくるように頼む。かかしを連れてきたジャックの目に今まで見たことないベティの笑顔が映る。それを見てようやく妹の幸せを素直に祝福できたジャックの耳にどこからともかく声が届いた。
“今度はあなたの番よ”
手紙の送り主は結局わからない。だが、それはもしかしたら……。

ここから世界を眺めるのが好きだった

10月の箱庭
しがない小説家の篠田和徳は烏の夢を見る。烏の夢に魘されている篠田と彼の面倒を見る少女。親戚に世話を頼まれたというが、篠田は少女の名前がどうしても思い出せない。
少女の正体は篠田の夢に出てきた烏で、死の間際に寂しさを覚えた烏が少女に憑いていた。
少女――烏への餞として篠田は1作の小説を書く。タイトルは『10月の箱庭』
先日男に拾われた

それから
『式の前日』の後日談。弟――俊明の許に義理の兄から姉――絵里が救急車で運ばれたというメッセージが留守番電話に入った。だが、俊明はメッセージに気付かず、テレビを見て酒を飲んでいた。部屋でくつろぐ俊明の許に一本の電話が入る。元気な女の子が産まれたと。
知らせを受けて喜ぶ俊明。それを飼い猫は静かに見守ったいた。
穂積先生の短編集。『式の前日』です。私この本読むまではてっきり結婚式の前日をテーマにしたオムニバスものだとおもってたんですけど、実際のテーマは“2人の関係”です。きょうだい・父娘・家主と居候(これはちょっと違うかも)など様々な形の2人が登場し、その2人を中心にフォーカスが充てられています。
静かな雰囲気と少し不思議が混じりあって読んでいて穏やかな気持ちになる作品です。これでまだ新人漫画家の作品なんだから驚きです。