名探偵コナン ベイカー街(ストリート)の亡霊  監督:こだま兼嗣  脚本:野沢尚

ベイカー街の亡霊
待ってろ…絶対、また逢えっから…
夢か幻か!?歴史の迷宮(ラビリンス)に隠された真実をつかめ!
あらすじ
マサチューセッツ州で1人の少年が飛び降り自殺するニュースが流れた。彼の名はヒロキ・サワダ。若干10歳にしてマサチューセッツ工科大学に在籍し人工知能『ノアズ・アーク』を開発した天才少年としてアメリカでも脚光を浴びていたが周囲からかかるプレッシャーに耐えかねてノアズ・アークを一般の電話回線に逃がして自殺してしまったのだ。
時は流れて2年後。コナン達は米花シティーホールで開かれた仮想体験ゲーム機『コクーン』の完成披露パーティに参加していた。このコクーンのゲームのシナリオにコナン、つまり工藤新一の父・優作が携わっていた縁で招待されたのだ。しかし、コナン達はそこでパーティに呼ばれていた裕福な家の子供に絡まれてしまう。
そんな中パーティでシンドラー・カンパニー社の社長•トマス・シンドラーがゲーム開発責任者・•樫村忠彬(かしむら ただあき)を殺害する事件が発生。樫村が起動させたプログラムで事件の手掛かりがコクーンのゲームの中にある事に気づいたコナンはコクーンに乗り込む。そんなコナンを心配した蘭とゲームの参加者から参加資格のバッチをカードと交換した探偵団も一緒にコクーンのゲームに参加した。
コクーンのゲームではかつてヒロキが流出したノアズ・アークがゲームを乗っ取っていた。ノアズ・アークは日本社会をリセットする為に子ども達を人質に取り50人の子供の中で誰もゴールできなかったら全員の脳に電流を送り込み殺害するという。
果たしてコナンは50人の子ども達の命を守る事ができるのか?
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今回はコナン映画で異色の作品と言われる『名探偵コナン ベイカー街の亡霊』の紹介です。何故この映画が異色作であるかと言うと、脚本が今までコナン映画を担当してきた古内一成先生ではなく『眠れる森』『破線のマリス』などを執筆した脚本家・小説家の野沢尚先生が担当しており、エンターテイメントとラブロマンス面が強かった今までの作品と比べると日本教育と世襲制の批判・子どもの自殺シーン・コナンの仲間が次々と消滅する展開と方向性がだいぶ異なっており、またこの映画ではコナンが諦めるシーンや新一の言葉(具体的には新一から聞いたホームズの台詞)で自決する蘭など原作とは少しキャラが違うのではないかという場面もあり、そこが異色作と呼ばれる所以だと思います。
一方で現実世界とバーチャル世界で優作とコナン親子がそれぞれの事件を解決するという展開・バーチャル世界なので阿笠博士の発明品が使えないという今までにない状況・次々に仲間が消える緊迫した物語・初めは生意気だった裕福な子供達がコナン達と関わった事で成長していくドラマ性・原作ではありえないですが諦めたコナンが再び立ち上がるシーンなどこの映画ならではの展開や物語もあり本作が一番好きと言う声も少なくありません。
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本作の脚本を手掛けた野沢先生はこの映画公開の2年後の2004年に自殺という形でこの世を去りました。もし生きていたらまたコナン映画の脚本を書いたりドラマや映画の脚本・小説の出版など活躍してのかもしれません。日本社会に疎外感を感じてアメリカに渡り周囲のプレッシャーに耐えかねて(養父があえてそうして自殺に追い込んだ)自ら死を選びその想いを受け継いだノアズ・アークは最後の願いとして子ども達と一緒に遊ぶ事だった。
もしかしたら野沢先生は本作……ヒロキに何かしら特別な想いを込めたのかもしれませんが、今となってはそれは永遠に分からずじまいです。