過狩り狩り  作者:吾峠呼世晴

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作画★★☆☆☆
最近は新人の漫画家や漫画家志望の方でも絵が上手い(意地悪な言い方をすればパッと見上手く見える人だったり)人が増えてきたんですが、ワニ先生はかなり下手に見えます。線がやや雑で、もう少し丁寧さを感じればそこまで下手ではないように思えますがパッと見下手に見えるタイプ。担当にも「絵はアレ」と遠回しに言われたようです。
参照
ttps://www65.atwiki.jp/kimetsunoyaiba/pages/14.html
しかし、珠世の着物の柄や壁の障子の柄など背景や服・小物には力を入れていて、そういう細かい所も描写できるのは良いと思いました。じっくり絵を見るとキャラを色んな構図角度で描ける技術はあって全く下手というわけではないと思います。
物語★★☆☆☆
物語は主人公(……と言っていいのかな?)の隻腕の青年のこれまでの人生の回想と鬼の戦いが交互に描かれ、後半で青年と鬼の戦いと青年を育てた男との別れの回想とわずかな後日談という、ジャンプの読み切りでは珍しい構成です。
私の読解力の無さもあるけど、かなり分かりにくく能動的に物語を読み解こうとしないとよく分からない作品です。
鬼滅の刃の前身ということもあって世界観や鬼の能力の設定は鬼滅の刃のものと同じとみて良いので、鬼滅の刃を読んでから本作を読むと青年が組している機関(鬼殺隊のような組織。軍服の男がいたから本作では政府が極秘に組織している?)珠世と愈史郎の能力について分かるので、鬼滅の刃を読んで面白いと思ったら本作を読むといいかも?
主人公の魅力★★★☆☆
隻腕の青年を主人公と捉えるなら(表紙にいたし)かなり異端な主人公と言っていいでしょう。
盲目(もしかしたら眼は義眼なのかも)で隻腕の剣士という設定もそうですが、なによりとにかく喋らない。心理描写が一切ない。彼がどういう気持ちで男の食べ物に手を伸ばしたのか、死にかけて何を思ったのか、幼い頃から共に暮らしていた男が病にかかった時どう思ったのか、読者は彼の人物像は回想から想像しなければなりません。モノローグが多い鬼滅の刃とは真逆の作りともいえるでしょう。
私は青年に関しては鬼滅の刃の富岡義勇と似た匂いを感じました。寡黙で強く無愛想。富岡って言葉足らずだけど実はすごい熱い心と優しさを持っているのでこの青年も鬼に対しての情け容赦なさとは裏腹に優しい心を持っているのではと思ってます。最後の男がさっさと行けと邪険に振る舞ったのも病気の男が心配な青年に対して突き放すことで青年の足かせにならないようにしたのかな?
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総評
私が鬼滅の刃のファンなので、どうしても採点が甘くなってしまいますが、おそらく本作は10人中8人が面白くないと答えるけど残りの2人が面白い・センスがあると答える漫画ではないでしょうか?
絵の未熟さはありますし物語の全体像が掴みにくいという課題は多いですが、個性があるというのは、読み切りとしての完成度は高いけどどこかで見たような内容・主人公という評価が多い最近の読み切りの中では強い力になるのではないでしょうか?
鬼滅の刃が連載された当時ワニ先生の読み切りが一挙配信されましたが、その時のワニ先生は鬼才と評価されました。荒はあるけど個性があるというのは編集からも評価されていたんですね。