クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん  監督:高橋渉  脚本:中島かずき

逆襲ロボとーちゃん

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ロボとーちゃん
本作の主役といっていい存在で、作中は始終ロボとーちゃんに感情移入して観てました。
ロボットになったばっかりの頃はしんのすけ以外からは敬遠されて、それでも家族の為に動くことでみさえから受け入れられ、ロボットとしての生を歩もうとした矢先に洗脳されて自我を奪われる。しんのすけの活躍で洗脳は解かれたものの、敵の基地で『人間』のひろしが捕まっているのを発見。ロボットのひろしは本物のひろしではなくひろしの記憶をコピーした存在だったのです(以下、人間のひろしはひろし、ロボットのひろしはロボとーちゃん)
初めは自分が本物のひろしというロボとーちゃんでしたが、みさえが選んだのは人間のひろし。この時のロボとーちゃんの絶望感は想像するだけで辛い。
自分こそ本物だと訴えますが、そんな矢先この事件の黒幕が登場。戦いの最中、ボロボロになり再起不能になる直前にひろしと腕相撲を取り、負けます。そしてひろしに自分の分まで父親をやれと言って機能停止します。
ロボとーちゃんは偽物だったわけでなく、自分が本物だと思っていた。何故ならひろしの今までの人生の記憶が全て詰まっているから。だからロボとーちゃんの家族への愛情は本物でだから人間のひろしを受け入れられなかった。そんなロボとーちゃんのアイディンティティは自分をひろしと受け入れてくれたはずのみさえが自分を素通りしてひろしに駆け寄る時に少しずつ崩れていきます。
そして再び洗脳されたロボとーちゃんは自我を失い、しんのすけに拷問(ピーマンを食べさせるという傍から見たら大したことないのですが、野原一家の反応からしてしんのすけのピーマン嫌いは相当のようなのでしんのすけにとっては一番効果的なのでしょうね)するも、しんのすけが大嫌いなピーマンを食べた事とひろしの叱咤により自力で洗脳を解きます。
五木ひろしを模したロボットに対抗して合体ロボを作り(序盤の劇中劇がここで生きるとは思いませんでした)戦い、勝利したもののすでにボロボロ。それでもひろしに腕相撲で勝負を持ち掛けます(この時のロボとーちゃんは何で勝負を持ち掛けたのでしょうか? 最期だから自分こそが本物であることを証明したかったのか、男の意地って奴なのでしょうか?)ボロボロのロボとーちゃんとひろしは互角の勝負をします。しんのすけはどちらも応援し、その応援に鼓舞する2人ですが、みさえの「あなた」を聞いてロボとーちゃんは敗北。薄れゆく意識の中しんのすけから「どっちも大好きな父ちゃん」と聞いて、ひろしに「俺の分まで父親をやれ」と言い残しロボットとしての生涯を終えます。動かなくなったロボとーちゃんにしんのすけが最後の握手を交わします。
しんのすけにとってはひろしもロボとーちゃんも「父」であるけど、みさえにとっての「夫」はひろし。ここの違いになにか、こう、感じるものがあるんですが上手く言えません。
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黒幕
本作の黒幕である黒岩 仁太郎(くろいわ じんたろう)
序盤はただのナルシストという感じでしたが中盤でその本性が明らかになります。性格は悪いし、やっていることも大変な騒ぎを起こしたのですが、悪に走った理由が家族に冷遇されたから。
今までのクレヨンしんちゃんの映画の悪役は純粋に世界を我が物にしたい系で単純悪で成敗されて爽快という悪役だったり、『爆発!温泉わくわく大決戦』みたいなしょうもない理由で悪事を働いて同情する気が起きない悪役だったり『大人帝国の逆襲』みたいに悪役にも希望のある終わりだったりして(最近のクレしん映画観てないのですが)こういう悪に走った理由が分かって同情できる系の悪役ってなんか意外です。最後の台詞が「妻よ、娘よ。父に愛をくれ」(間違ってたらごめんなさい)だったのがなんか切ない。家族のコミュニケーションが取れてたら黒岩も悪事を働くことはなかっただろうに。