クレヨンしんちゃん ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者  監督・脚本:本郷みつる

金矛の勇者
『選ばれし“おバカ”の伝説と冒険が始まる!』
あらすじ
暗黒世界ドン・クラーイの帝王アセ・ダク・ダークは、人間界を支配しようと企んでいた。しかし、闇を打ち払う「三つの宝」と「勇者」の伝説を知ったダークは、「三つの宝」の一つである「銅の鐸」を奪取。残る二つの宝「金の矛」と「銀の盾」を奪おうとするが、一足早くダークの企みを知ったある男によって「金の矛」と「銀の盾」は人間界へ送られる。
その頃、しんのすけはデパートでアクション仮面の新作のおもちゃ「アクションソード」を買ってもらう。ところが家に帰って箱を開けてみると、アクションソードはものさしに変わっていた。それから数日後、幼稚園からの帰りにシロにそっくりな黒い犬・クロを拾い、クロをペットとして飼うことにした。その夜、目を覚ましたしんのすけは突然家を訪ねてきたプリリンというセクシーな女性に出会い、彼女に頼まれて一緒に外出する。しかし、プリリンの正体は人間界に送り込まれたダークの部下だった。しんのすけはダークの策略にかかり、人間界とドン・クラーイを繋ぐ扉を開いてしまう。
翌日、しんのすけが開いてしまった扉から闇が人間界に流れ込み、その影響で野原家に様々な災難が降りかかっていく。そんな時、しんのすけの前にマタ・タミという少女が現れる。彼はしんのすけが「金の矛」に選ばれた勇者だと告げ、しんのすけを守るためにやってきたのだという。マタと共にダークと戦う決意をしたしんのすけだったが、マタが現れたことを知ったプリリンが罠を仕掛け…(ウィキペディアより)
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今回紹介するのは『クレヨンしんちゃん ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者』初代監督の本郷みつる監督が久しぶりにメガホンを取った作品で本郷監督らしいファンタジー的な世界観と過去の本郷作品のオマージュ要素が含まれた1品となっています。
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不気味だけど楽しそうな世界
本作ではドン・クラーイの影響でしんのすけの世界もどこかおかしくなっていき(みさえがいつもより苛立つ・マナー違反が増える・しんのすけの友達のかすかべ防衛隊が冷たいなど、あからさまにおかしくなっていないので分かりにくいですがドン・クラーイの影響で人々の負の感情が強くなっていくようです)金の矛と銀の盾に選ばれたしんのすけだけがその影響を受けず、しんのすけは夜に自分の世界とドン・クラーイの世界の狭間に迷い込んでしまいます。この世界が不気味ながらもどこか絵本のような世界でしんのすけもどこか楽しそうにしているのでそこまで怖い感じがしませんね。こういうファンタジー的な世界を描けるのは日本ではアニメならでは、です。
他にもファンタジックな演出や世界観が描かれていて、この世界観が本作の魅力の一つです。
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あくまで5歳児
アセ・ダク・ダークの手下のマック ・ラ・クラノスケに怯えたり、本作のしんのすけは原監督のしんのすけと比べると臆病な面が多々見られます。本郷監督のしんちゃん映画のしんのすけは他の監督と比べると生意気だけど純粋で心優しい普通の子供であることが強調されていて終盤でしんのすけが繰り返す「オラ野原しんのすけ。5歳」という自分はあくまで5歳の子供だと主張するシーンにも表れていると思います。そんな臆病さを持ったしんのすけが家族や友達の為に勇気を出す少年だからこそヒーローになれ、そこがグッとくるんじゃないでしょうか?
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大人だって泣きたい
今作で印象的だったのは、ひろしの会社でのシーン。ドン・クラーイの影響なのかひろしに入った昇進の話は叶わず、上司の前では気にしていないという風のひろしが会社のトイレで1人涙を流します。ほんのわずかなシーンなのですが、人前で簡単には泣けない大人の男の切なさや人生は上手くいかないという厳しさが込められているようで印象に残りました。
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ブランクは大きかった
本郷監督はしんちゃんの初期に携わった人でひまわりが誕生する前にしんちゃんから一時期離れていました。その所為かテレビアニメ版と設定やキャラに違和感がある場面もありました。
・家の描写
私も最近のしんちゃんはそこまで見ていないんですが、どうも家の内装や家具に違和感がありました。特に朝食を食べる時に台所でテレビを見るシーンがあるんですが、野原家の台所にテレビは無かったはず。
・ひまわり
ひまわりは赤ちゃんなのでまだ喋る事が出来ず、今作ではひまわりの言葉をみさえが訳します(テレパシーとかではなく、何となくこう言ってるんだろうなという母親の勘で)しかし、他の作品ではひまわりの言葉をいちいち訳すことはないので違和感が強かったです。他のスタッフが教えてくれなかったのでしょうか?
・しんのすけの帰宅描写
しんのすけは幼稚園に行く時や帰る時は幼稚園のバスを使います。幼稚園のバスは自宅の前までしんのすけを送るのに今作ではバス停でしんのすけを1人降ろします。ただ、このシーンはしんのすけがクロを拾う重要なシーンですのであえて設定を変えたのかもしれません。
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気になる点はありますが、初期のしんちゃん映画らしいファンタジー的な世界と「あー言えばこう言う」キャラの掛け合いなど懐かしい点があり、演出も面白い所がありました。また今作では最後の敵との決着はしんのすけだけ(正確には金の矛と銀の盾がありますが、彼らはあくまで道具というスタンスみたいですし)という珍しい形になっています。ただの5歳児が勇気で悪を倒して別れ際にヒロインから“お礼”を貰う。ヒーローものとして中々王道の作品だと思います。